東京高等裁判所 昭和31年(う)2376号 判決
被告人 張尚[王宛]
〔抄 録〕
よつて、原判決が、罪となるべき事実として引用している昭和二十九年三月四日付起訴状並びに同年同月三十日付及び同年六月二日付各追起訴状記載の公訴事実に関する所論主張について原審記録ないしは原審における証拠によつて考察をするのに、被告人が、鄭明鎮、金基舜等と共謀して、昭和二十八年九月頃から同二十九年一月頃までの間に福島県河沼郡日橋村広田国鉄磐越西線広田駅から少くとも神奈川県三浦郡逗子町国鉄逗子駅ないしは同県鎌倉市国鉄鎌倉駅までの間しばしば石鹸箱や林檎箱等の木箱に入れた精米を二個ないしは三個位宛生柿、干柿、大豆、小豆等の品名で鉄道便をもつて輸送した事実は、これを窺がい得ないわけではないが、昭和二十九年三月四日付起訴状記載の公訴事実は、原判決挙示の証拠によりこれを認め得るほか各追起訴状記載に見る如き各日時におけるそれぞれの精米輸送の事実はついにこれを確認するに由なく、原判決が、罪となるべき事実として右各追起訴状記載の事実を認定したことは、とりもなおさず、証拠なくして事実を認定したもので、判決に理由を附さない違法を冒したものというのほかはない。論旨第一及び第二点は究極において理由がある。
(三宅 河原 遠藤)